この家 その店 あの日の昼餉 2景
いつの日か、手の届かぬものとなるだろか。
江戸前と、庶民に馴染んだあの味よ。
鰻めし、おいしや惜しやと噛みしめる。
今や、夏の風物詩となっている鰻。
暑さが増すと宣伝も増え、気付くと「うな丼」に手が伸びる。
鰻のかば焼きは、歌人の茂吉さんも大好物だったそう。
戦時中にも鰻の缶詰を蓄え、惜しみ惜しみ食べていたという。
美味さのみならず、蒲焼作りの技だって見事。
後世に残したいものだ。
となれば、卵から養う技の成るように願うばかりだ。
ちなみに、蒲焼を飯に乗せる鰻飯は、江戸の文化期に始まったとのこと。
蒲焼は前からあったが、江戸時代には工夫が加えられ、格段に美味くなった。
江戸時代の鰻は、立ち食いなら一串16文、店でなら一皿150~200文だったらしい。
裏長屋の店賃は、月300文が相場だというから、店の鰻は一皿でひと月の家賃半分ほどになる。
庶民にとって立ち食いなら気楽だが、店に行くのはちょいと覚悟がいるか。
鰻は庶民にとって、たまに奮発して食べるご馳走といった感覚なのは、江戸も今も変わらぬのかもしれない。
来年も、夏の土用の丑の日には、うなぎうなぎと賑わうか。
蒲焼の香ばしさは、どれくらい広がるだろか。
参考:日本銀行貨幣博物館
深川江戸資料館
大江戸ものしり図鑑(主婦と生活社)
一日江戸人(新潮文庫)
母の影(新潮文庫)
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